事業再構築補助金第5回目と第6回目~第8回目の動向

事業再構築補助金は、1兆1485億円の予算を確保している補助金史上最高額となる大型補助金制度です。

コロナをきっかけに厳しい経営状況となった多くの企業に立ち直ってもらいたい国の強い意志が見て取れます。

2021年12月に公表された令和3年度第3次補正予算の概要が中小企業庁から公表されました。大規模な要件緩和、見直しが複数あるので、初めて申請する方も、再申請にチャレンジする方も必見です。

そもそも事業再構築補助金とは

事業再構築補助金とは、中小企業、個人事業主、中堅企業などを対象にした補助金制度です。

コロナの影響を受けて苦境にある企業が、思い切って事業を再構築するための支援策として創設されました。国としては、この補助金を活用して、日本の新しい商品やサービスを作ってほしいという狙いがあります。

事業再構築補助金最大の魅力は、国が実施する補助金の中で過去最大の予算(1兆1,485億円)を確保していて、補助金額等の支援内容が手厚い点です。

第5回公募からは以下の項目を中心に複数の変更点があるため、当記事で今後の方向性を紹介していきます。

  • 第5回公募:事業再構築の類型(※)によって定められている要件の緩和 等
  • 第6回公募から:事業類型(※1)の廃止や新設 等

※「事業再構築の類型」は5つあり、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」、「事業再編」です。採択ゲットにつながる事業計画を作成する際に、確認が必要です。

※「事業類型」は、事業再構築の内容によって分かれています。コロナによって受けた影響(売上減少等)や将来的な見通しが申請対象となるかを判断するときに、確認が必要です。

第5回公募における変更点|「売上高10%要件の緩和」等で申請できる事業者の幅が広がる

第5回公募では以下の変更点があり、申請事業者の幅が広がることが期待できます。

・売上高10%要件の緩和
・補助対象経費の見直し

「売上高10%要件の緩和」で事業再構築を考えやすくなる

「売上高10%要件」とは、事業再構築の類型が「新分野展開」、「業態転換」の場合に、必ず満たす必要のある要件です。具体的な内容は、「事業再構築に取り組む事業の売上高を、総売上高の10%以上にする」こととなっています。

この要件によって、「新たに取り組む事業ですぐに売上を確保できる見通しがない」等の理由で申請を諦めていた事業者様も多いと思います。

第5回公募からは、新たに2つの要件が加わって選択制になります。

【新たな2つの要件】

  • 事業計画期間(3〜5年)終了後に、新たな製品やサービスによる付加価値額(※)が総付加価値額の15%以上
  • 「総売上高10億円以上の事業者」&「事業再構築をする事業部門の売上高が3億円以上」の場合、その事業部門の売上高が総売上高の10%以上

(※)付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」のことで、中小企業庁は「付加価値額=従業員1人あたりの生産性=給与アップの原資となる重要なポイント」と考えています。

特に付加価値額の要件が加わったことで、申請事業者の幅が広がると予測できます。

ちなみに今回緩和される「売上高10%要件」は、前述のとおり「新分野展開」、「業態転換」の場合の要件です。中小企業庁は事業再構築補助金に関する動画の中で、以下のように発言しています。

「事業再構築の類型のうちどれを選んでも、採択率には影響がない。どの類型にするか迷ったら、補助金の審査員に事業の内容を一番伝えやすい類型を選んでOK」

工場の賃借料が補助対象経費となり経費負担が軽減できる

第4回公募まで、建物の賃借料は補助対象経費として認められていませんでした。第5回公募からは、貸工場の賃借料に限って補助対象経費となります。

以下の条件はありますが、事業再構築にあたって新たな工場へ移転等をする場合、大きな資金が必要です。経費負担の軽減で、事業計画の幅が広がるのではないでしょうか。

  • 補助事業実施期間内(補助金交付決定から1年〜1年2ヶ月ほど)に工場の改修等を完了して、貸工場から退去
  • 認められる経費の内容が決まっている(賃借料、移転費など)
  • 貸工場の賃借料として認められる上限額は、補助対象経費総額の1/2

第6回公募における変更点|「売上高10%減少要件の緩和」、「事業類型の新設」などで新分野への支援が手厚くな

第6回公募では、大きな見直しが複数あります。

  • 事業類型の廃止、新設
  • 売上高10%減少要件の緩和
  • 通常枠(事業類型の1つ)の補助上限額の見直し
  • 補助対象経費の、更なる見直し
  • 事前着手の対象期間見直し

事業類型の廃止、新設によって事業再構築補助金が大きく変わる

まずは「第5回公募まで」と「第6回公募から」の事業類型を、一覧表でチェックしましょう。

第5回公募まで 変更内容 第6回公募から
通常枠 継続 通常枠
緊急事態宣言特別枠 廃止
→新設
回復・再生応援枠
卒業枠・グローバルV字回復枠 廃止
→新設
グリーン成長枠
最低賃金枠 継続 最低賃金枠
大規模賃金引上枠 継続 大規模賃金引上枠

新設の事業類型は、廃止となった事業類型のニーズも満たす内容です。新設の事業類型の内容を紹介します。

【回復・再生応援枠】
緊急事態宣言枠の廃止に伴って新設された類型で、事業類型の中で最も申請数が多い通常枠ほどの補助金額(2,000万円〜)を必要としない事業向けです。

回復・再生応援枠の概要は、以下のとおりです。(詳しい要件は未定)

  • 補助上限額:100万円〜1,500万円(従業員規模に応じて金額が違う)
  • 補助率:中小企業3/4、中堅企業2/3
  • 「業態転換」(事業再構築の類型)を選ぶ場合、第5回公募まで必要だった「主要な設備の変更」をしなくてOK

特に製造業等の事業者にとって「主要な設備の変更」という要件は、手持ち資金を圧迫する要因の1つでした。主要設備の変更が必須要件から外れることは、柔軟に事業計画を作成するきっかけになる可能性があります。

【グリーン成長枠】
卒業枠の廃止に伴って新設された類型で、グリーン分野(エネルギー・環境分野)での事業再構築に取り組む事業が対象です。

補助金上限額が事業類型の中で最大なので、「全く新しい事業に取り組みたい」、「グリーン分野に関するアイディアがある」という場合は、ぜひ検討してみて下さい。

  • 補助上限額:最大1.5億円
  • 「売上高10%要件」がない

グリーン成長枠の主な申請要件は、以下のとおりです。

  • グリーン成長戦略「実行計画」14分野(※)が抱えている課題を解決できる事業
  • 「2年以上の研究開発、技術開発」or「従業員の一定割合以上を人材育成」

※グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは、政府が推進している「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)」という政策に大きな影響があるとされている14の分野です。

グリーン成長戦略「実行計画」14分野

産業の分類 分野名
エネルギー関連産業 ・洋上風力・太陽光・地熱
・水素・燃料アンモニア
・次世代熱エネルギー
・原子力
輸送・製造関連産業 ・自動車・蓄電池
・半導体・情報通信
・船舶
・物流・人流・土木インフラ
・食料・農林水産業
・航空機
・カーボンリサクル・マテリアル
家庭・オフィス関連産業 ・住宅・建築物・次世代電力マネジメント
・資源循環関連
・ライフスタイル関連

「売上高10%減少要件の緩和」で要件に該当する事業者が適用となる「売上高10%減少要件」とは、コロナの影響を受けたことで事業状況が厳しくなったと証明するための要件です。

※ 前述の「売上高10%要件」とは全く違う内容です。言葉が似ているのでご注意下さい。

まずは、「第5回公募まで」と「第6回公募から」の変更内容をチェックしましょう。

第5回公募まで 第6回公募から
選択可 2020年10月以降に売上高10%以上減 2020年4月以降に売上高10%以上減
2020年4〜10月に売上高10%以上減

2020年10月以降に売上高5%以上減

第6回公募からは、売上高10%減少要件に該当するかどうかを以下のように判断します。

2020年4月以降で特に経営が厳しかった連続6ヶ月分の売上高をピックアップ

2019年 or 2020年の同じ月の売上高と比べて、10%以上減少した月をピックアップ

売上高が10%以上減少した月が3ヶ月以上あれば、「売上高10%減少要件」に該当

この見直しでコロナ拡大当初に売上減少の打撃が大きかったより多くの事業者が、要件に当てはまると予測できます。

通常枠の補助金上限額の見直しで事業再構築補助金予算を大切に使う

事業類型の中で最も申請数が多い通常枠の補助金上限額が、以下のように見直しとなりました。

従業員の人数 補助金額 補助率
第5回公募まで 第6回公募から
20人以下 100〜4,000万円 100〜2,000万円 ・中小企業2/3
(6,000万円超は1/2)
・中堅企業½
(4,000万円超は1/3)
21〜50人 100〜6,000万円 100〜4,000万円
51人〜100人 100〜8,000万円 100〜6,000万円
101人以上 100〜8,000万円

この見直しの主な理由は、限りある予算をより多くの事業者に配布するためです。

本当に必要な額を計算し、審査員が納得する根拠を事業計画書に明記して、事業再構築補助金の採択につなげましょう。

補助対象経費の見直しで事業再構築補助金の予算を大切に使う

補助対象経費の中の「建築費」、「研修費」の内容が見直しとなりました。この見直しも、限りある予算をより多くの事業者に配布することが目的です。

  • 建築費:補助対象経費となるのは原則的に改修のみ。新築の場合は制限あり
  • 研修費:補助対象経費総額の1/3が上限

「複数企業等連携型」の新設で他社と協力して申請しやすくなる

中小企業庁は、事業再構築補助金の実施当初から、「複数事業者が集まって大きなチャレンジをすることに期待している」と公言しています。

事業者ごとに補助金の採択をゲットすれば、資金を集めてより大きな規模の事業に取り組めるためです。

第5回公募までは複数事業者が集まって事業に取り組む場合でも、各企業がバラバラに申請が必要です。第6回公募からは、最大20社まで連携して申請できます。

【注意】事前着手の対象期間見直しがある

事業再構築補助金は、交付決定後に事業に着手するのが原則です。でも厳しい状況の中で審査を待っていられないというケースもあるのではないでしょうか。

そこで、以下の条件に限って「事前に着手した事業の経費を補助対象として認める」という特例があります。

  • 事前着手を申請して承認を受ける
  • 「事前着手の承認=補助金採択ではない」ことを了解した上で事前着手をする
  • 事前着手の経費として認められるのは、2021年2月15日以降の購入契約(発注)等

第6回公募から、事前着手の対象期間(2021年2月15日)の見直しが決定しています。すでに事前着手をしている場合、見直し後に決定した期間によって第6回公募〜の補助対象経費として認められないケースもあるため、注意が必要です。

事業再構築補助金の今後のスケジュール事業再構築補助金には予算があるため、公募があと何回あるのか気になっている方も多いと思います。第5回以降の公募スケジュールは、以下のとおりです。

  • 第5回公募:2022年1月中予定
  • 第6回公募〜:第5回公募後、2022年中に3回程度の公募を実施予定

まとめ

事業再構築補助金の今後の方向性を紹介しました。第5回公募、第6回公募からは多くの変更、見直し点があり、より申請の幅が広がると予測できます。

認定支援機関の協力の基、事業再構築と企業発展につながる事業計画を作成して下さい。